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AI時代の英語教育: 未来に向けて必要な挑戦とは?(前編)


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▪️ まえがき

AI(人工知能)の進化が外国語教育にもたらす変革は著しく、特に英語学習においては、10年前には考えられないほど素晴らしい学習ツールが登場しています。

このような状況を鑑みると、私たちは英語教育の分野において大きな転換点に立たされていると感じざるを得ません。今後の焦点は、日本人が英語をどのように学ぶかだけではありません。人間が外国語を学ぶ価値があるのかという根本的な問いを考え直さねばいけない時期に来ていると感じています。

今回は、「AI時代の英語教育」の前編として、未来の労働市場や機械翻訳の技術向上について触れます。さらには、文科省のAI利用に関するガイドラインから、日本の英語教育はどう変化していくかについても言及します。




▷ 目次





*本記事は、留学エージェントMYNDSさんとの共催記事です。MYNDSさんの記事は、こちらをご覧ください。




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1. 未来の労働市場と言語スキル

 

10年または20年後の未来を想像してみてください。AIがますます広範囲で活躍している様子が容易に想像されます。米国の研究(Frey & Osborn 2013)によれば、約47%の仕事がコンピュータによって代替される可能性が高いと予測されています。同様に、米国労働省の調査によれば、「2011年にアメリカの小学校に入学した子供たちの65%は、まだ存在していない職業に就くであろう」と予測されています。少子化が深刻な日本ではどうでしょうか。野村総合研究所(2015)は、日本の労働人口の49%が人工知能やロボットによって代替される可能性があると報告しています。

 

このような近未来の状況では、AIが広く活用される中で、英語や他の外国語の価値が新たな意味合いで変化することが予想されます。国際的なビジネスやグローバルなコミュニケーションの拡大に伴い、英語や他の外国語のスキルが重要視されるという状況は続くでしょうが、その一方で、言語の習得においては、人間が努力し、時間やお金をかけて向上させる必要があるのかいった疑問が浮かび上がります。

 

外国語を一度でも学んだことのある人なら誰しもがわかると思いますが、言語スキルをある程度のレベルに到達させるためには、多くの苦労と困難を伴い、膨大な時間をかけて学ぶ必要があります。これまでの人材市場では、「英語人材」などという言葉に代表されるように、語学力が市場価値を上げるとされてきましたが、AIや機械翻訳などの技術の進歩により、そうした市場価値の変化が大いに見込まれます。


 


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2. 機械翻訳はどこまで進化した?

 

機械(自動)翻訳の精度向上に伴い、機械翻訳が人々の語学力を補完する可能性が想像されます。少し前までは機械翻訳を利用した場合、即座にわかってしまうほどに不自然な表現が目立っていました。例えば、的確な単語を選択できていない文章、文脈を理解していない文章、そして正確にニュアンスを捉えきれていない表現などが頻繁に見受けられました。

 

ところが近年、機械翻訳の精度が格段に向上したのにお気づきでしょうか。Google翻訳を例に挙げると、Google社は2016年に「ニューラル翻訳」という深層学習(deep learning)を導入した技術を採用しました。以前の統計的機械翻訳(SMT)では文の構造や文脈の把握が難しく、単語単位での翻訳が主流でしたが、ニューラル翻訳では、ニューラルネットワーク(人間の脳神経系のニューロンを数理モデル化したもの)を用いて、文章全体の意味や文脈を理解し、より自然で流暢な翻訳を生成することが可能となりました。

 

Google ニューラル翻訳の成功は機械翻訳全体の進化に寄与し、大手テクノロジー企業が深層学習を基盤にした機械翻訳技術を開発する基礎を築いたとされています。何よりも、機械翻訳技術はまだ発展途上であり、今後も進化する可能性を秘めています。将来、精度向上により、これまで言語スキルを強みとしてきた人々の労働が機械翻訳によって代替される状況が容易に想像されます。極端な話、こうした進展が進むと、いずれは学校の教科から英語(外国語)が外される可能性も考えられます。

 



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3. 文科省のAIに関するガイドラインとは?

 

急速に進展するAIや機械翻訳の技術の進展を考慮し、文部科学省は2023年に「教育現場での生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」を公表しました。そこでは、まず生成AIを活用することが情報社会において重要であると位置づけ、その上で、生成AIの教育利用に対する基本姿勢、リスクへの対処、そして不適切な利用例などを明示しています。

 

AIを教育分野で利用することに対する批判的な意見も存在しますが、日本政府はリスクを考慮しながらも、教育的な価値を見出し、前向きにAIを活用していくべきだとの立場を表明していると言えます。ガイドライン中では、生成AIの活用例として「英会話の相手として活用したり、より自然な英語表現への改善や一人一人の興味関心に応じた単語リストや例文リストの作成に活用させること」などを挙げており、教育現場では生徒にAIを「使わないで」と教えるのではなく、「どう使うか」を考えさせることで強力な学習ツールとして利用できる可能性を示唆しています。

 

要するに、AIは教育現場においても無視できない存在となり、教育分野においては、その活用方法を考えていくことに今後は重きが置かれるものと見られます。機械翻訳が言語関連の仕事を代替する状況はまだ即座には訪れないと考えられるため、今後しばらくは外国語学習の重要なツールとして学習に活かされていくと予測されます。




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▷ 次回の「後編」では、こうした状況を踏まえて、未来に向けて必要な挑戦とは何かについて考えます。


 

 

References: 

 

Davidson, C. N. (2011). Now you see it: How the brain science of attention will transform the way we live, work, and learn. New York: Viking.

 

Frey, C. B. and Osborne, M. A. (2013). The future of employment: How susceptible are jobs to computerisation. https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf#search=%E2%80%99C.B.+FREY+and+Osborne%2C+M.A. (2024年2月20日アクセス)

 

野村総合研究所(2015)「News Release: 日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替え可能に ~601 種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確率を試算~」https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf (2024年2月20日アクセス)

 

文部科学省(2023)「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」 https://www.mext.go.jp/content/20230718-mtx_syoto02-000031167_011.pdf (2024年2月20日アクセス)

 


 


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